KEIKO WALKERは日本とイギリスの血を受け、横浜に生まれる。カントリー・ミュージック・シーンで十代から歌い始めていたが、85年にKeiko Walker & The Hot Street Bandを結成し本格的な活動を開始している。その当初、ボーカル・スタイルや選曲から和製エミルー・ハリスの誉れが高く、若手が不毛だった当時の日本のカントリー界において、はつらつとしたカントリー・ロック・スタイルの歌と演奏でたちまち人気者となった。レイ・プライス、チャーリー・マッコイ、ジェームズ・バートンなど本場アメリカのミュージシャンとの共演も果たす。
1993年アルバム「RED IS THE ROSE」でレコードデビュー。現在はKEIKO WALKER BANDを率いてのバンド演奏、もしくは少人数編成でのアコースティックな演奏の二刀流で自身のライブを展開している。そんな彼女のライブにおいて、ここ数年イギリス、アイルランド、スコットランドのトラディショナル・ソングを多く取り上げたり、また従来からのレパートリーにもアレンジ面でそういった音楽のテイストを加えたりするなど、音楽性の変化が感じられていた。
2004年アルバム”BOTH SIDES NOW”をリリース。このアルバムはケイコ・ウォーカーのセカンド・ソロ・アルバムとなる。ファースト・アルバム”RED IS THE ROSE”(93年)以降、ミニ・アルバム”LOVE SONGS”(97年)や、SHIME(シメ)とのユニットBROKEN ASHESでのアルバム”BROKEN ASHES”(99年)をリリースしていたが、ケイコ・ウォーカー名義のフル・アルバムとしては11年ぶりということになる。
”BOTH SIDES NOW”では唯一無二のケイコ・ウォーカー・ワールドが広がっている。それは、音楽性のみならず、言葉やその背景にある精神性までをパーソナルなものとして消化することで成し遂げたものである。タイトル曲はジョニ・ミッチェルの代表的なナンバーのひとつであるが、ケイコ・ウォーカーはBOTH SIDES NOWという言葉に、自分の内側にある「天使」と「魔女」の二面性をかけていると言う。このアルバムを聴き通せば、なるほどと思うだろう。優しさの中に、どこか妖艶な雰囲気と情念が感じられる。それは彼女の歩んできた人生、そして音楽のキャリアの現時点での集大成と言ってよいだろう。もちろん、これからも彼女は成長していくだろうし、もっと変化していくのかもしれない。しかし、”Both Sides Now”には、人間的にも音楽的にも成長したケイコ・ウォーカーの今の姿がある。そこには自信が満ち溢れ、また同時にある種心機一転的な初々しさも感じさせる。色々な意味で興味深い作品となっているのである。このアルバムを一言で表現しようとすると、ブリティッシュもしくはケルティックなフォーク・ロック作品ということになろう。
かねてより彼女は1曲々々彼女なりのイメージを持ち歌い続けてきたが、聞く側にとっても共に演奏する側にとっても、イメージを分かち合う事こそが最大の楽しみであるのは言うまでもないであろう。また、始めに述べたが、ここ数年来の彼女は本人に流れるイギリスの血というものをさらに強く感じ始めている。それが音楽方向性の変貌の大きな要因になっている事は確かであろう。イギリス、アイルランド、アメリカのトラッドを取り入れ消化し演奏する彼女は明確なビジョンを持ち、アーチストとして更なる飛躍をし続けている。
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